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ルパンの消息(ネタバレ・感想・あらすじ)映画化もされました

いきなりですが言わせていただきます。超オススメの小説です。

推理小説は好きでちょいちょい読むのですが、あまり作者の方を気にしたことがありません。なので恥ずかしながらこの本の作者「横山秀夫」さんのことは知りませんでした。

あらすじを読み、少し気になったので読んでみようかな、と軽い気持ちで読み始めましたが、これが見事な大当たりだったわけです。

なおこちらの作品は2008年に映画化もされているようです。

ちなみに≪ルパン三世≫は全く関係ありません。

あらすじ

1990年(平成2年)12月。忘年会に出席していた某警察署の署長、後閑耕造(ごかん こうぞう)のもとにある知らせが届く。それは15年前に起きた高校女性教師自殺事案について、ある人物の密告(タレコミ)により殺人である可能性が浮上したので至急署に来るようにとの呼び出しだった。
一方、喜多芳夫は突然警察官に署に来いと命じられ、反抗するも強制的に連れて行かれる。取調室で問われたのは昔、悪仲間三人で企てた「ルパン作戦」なる期末テストを奪う作戦についてだった。
出典:wikipedia内容より

話の内容は、現在30を少し過ぎたサラリーマンの男性”喜多芳夫”(キタロー)を中心に進んでいきます。

15年前に起きた女性教師の自殺が殺人だったというタレコミが入り、キタローは容疑者となりますが、それには「ルパン作戦」という出来事が絡んでいたからでした。

ざっと内容紹介

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。そして長めです。

某警察署にある情報が届きます。15年前に発生した女教師の自殺事件に関して、犯人は当時生徒だった3人だ、という情報です。

その情報はかなり信頼性のあるものでしたが、なんと事件の時効まで24時間しかない、という状況でした。

それにより警察では当時生徒だったある3人の人物、”喜多芳夫”(キタロー)、竜見譲二郎(ジョージ)、橘宗一を集めます。

キタローはサラリーマンとなり、ジョージは地上げ屋、橘はホームレスと、3人は別々の人生を歩んでいました。

3人は過去のこと、そして彼らが行った「ルパン作戦」について聞かれます。ルパン作戦とは彼らが高校時代に行った「期末試験の問題を学校の金庫から盗む」、というものでした。「喫茶店ルパン」にて発案されたことから”ルパン作戦”と呼ばれることになりました。

その喫茶店ルパンのマスターは” 内海”という男で、三億円事件の容疑者でした。

そして彼らにはもう一人マージャンをするときの仲間”相馬”というやつがいました。

相馬はろくに学校にも行かずマージャンばかりして、小学生の妹と暮らしていました。彼らの両親は借金を苦に子ども無視して蒸発していたのです。

一度キタローと橘はその妹を世話したことがあり、相馬の生活が苦しいことは知っています。

マージャン以外では特に付き合いも無かったため「ルパン作戦」は3人で行うことになりました。そして彼らは無事に1日目・2日目と問題を盗むことに成功します。

しかし3日目に忍び込んだ際に、金庫の中にはなんと女性の死体が入っていたのです!その女性は嶺舞子(グラマー)という学校の教師でした。

うちのネコ
うちのネコ
グラマーは3人から呼ばれていたアダナね

彼らは何事もなかった用にするため(発見したことがばれたら学校に忍び込んだことがばれるため)グラマーを金庫に入れたままの状態にして学校からでます。

しかし翌日グラマーが発見されたのは校舎の横の植え込みで、屋上には遺書と靴があり、彼女は自殺した、ということになっていました。

その後、期末試験での不正が発見され、3人は無期停学、相馬は学校の出欠を改ざんしていたのがバレ退学処分となってしまいます。相馬にいたっては決定していた就職がパーになってしまいました。

その後、相馬が自殺してしまいます。相馬の妹は区に児童保護されます。

事件の真相を調べていた3人は、あることから亡くなったグラマーがレズビアンだったことを知ります。彼女がキタローの彼女や同僚の教師「日高鮎美」にも手を出していたことがわかりました。グラマーは脅迫して女性を抱いていたのです。

そんな取調べの中、元喫茶店ルパンの店主で三億円事件の容疑者だった内海が自ら警察署へやってきます。この事件の重要参考人としてです。

次第に過去のことが明るみになっていき、警察は遂に犯人は日高鮎美であり、共犯者は橘宗一だったということを知ります。日高鮎美と橘宗一は関係があったのです。

事件の当日、学校内でグラマーに迫られた日高鮎美は誤って彼女を殺してしまい、混乱した日高鮎美は橘宗一に助けを求めます。そこで橘はグラマーを金庫に入れろと指示したのです。

ルパン作戦終了後、橘は2階からグラマーを落とし自殺として処理したのでした。その事実から、すでに事件の時効が成立していることがわかったのです。

時効を迎えたキタローに対して、一人の婦警が声をかけます。取調室で彼の調書を記録していた女性はなんと昔自殺してしまった相馬の妹でした。

兄が死んでしまい3人が生きている、といった事実に復讐をと思っていた彼女でしたが、実際は昔優しくしてくれたキタローに会いたいという気持ちがありました。

…しかしまだ事件はまだ終わっていませんでした。

事件の状況から不審な点があり、グラマーは橘に落とされたとき、まだ生きていたことがわかりました。彼女を本当に殺したのは”内海”だったのです。

結果として彼は逮捕されました。彼は3億円事件の犯人でした。そして犯罪というものの味を占め殺人を犯したということです。

レビュー・感想

まず、ストーリーのメインが「男子高校生の学生時代」っていうのがすごく良かったです。いわゆる青春時代。そのころというのは誰しも色々ありますからね。

私自身が男性で、なおかつ彼らのようにあまり勉強を熱心にやらなかったので、共感できるところは多くありましたね。

キャラクターが皆個性的で、なおかつそれぞれに隠された秘密や想いが感じられたのも良かったです。ぐいぐい惹きこまれて、あっという間に読めてしまいました。

なお一応犯罪が絡んでいるので推理小説ともいえると思いますが、誰が犯人だったかなんて全くわかりませんでした。というか推理を忘れるくらいストーリーに引き込まれる感じです。

結局犯人だった(と思われる)内海は、話の中で3億円事件の真犯人ということでしたが、最後どうなったかは書かれていません。よって本当に彼が殺したのかどうかはわかりません。

警察の考えた推理は確かに筋が通ってましたが、100%真犯人としての逮捕は誰にもわからぬままですね…

そして女性警察官の事実。あそこはえらく感動しました。まさか彼女が自殺してしまった相馬の妹だったとは…これはまったく想像すらしていませんでした。

優しさというものに無縁な生活だったので、キタローたちの優しさが彼女にとって特別なものになったのかもしれません。

あのチャーシューメンを買ってくるくだりや、キタローが「この子の親を殺してやりてぇ」と話すくだり。優しいやつなんだな、ってジーンとしましたよ。

そしてこの小説で一番興奮し、感動したもの。それはやはり「橘」という存在でしょう。個人的にはこの小説でメインと言ってもいいぐらい素晴らしいものでした。

普段はクールに装ってるけど、本当は心の中に熱いものがあって、好きな女性のためにすべてを捨てる覚悟を持っていた高校生。頭が切れて、恋人が年上で大人であろうと絶対に自分がお金を出すという姿勢。そして急にいなくなってしまったその恋人の辛さをずっと心にしまい続け、世間からも孤立した存在になったこと。そしてその橘がかつての恋人を見て、とうとう言った『どうしようもなく好きで』という気持ち。

そしてそれに対する鮎美先生の言葉もよかった。一生懸命バイトして、大切にしてくれる気持ちがホント嬉しかった、というのがね。

上手く言えないですが、同じ男性として本当に魅力的と言いますか、読んでいてぐーっと胸をつかまれたような感じでした。人を好きになるとそれが1番になってしまうの、よく分かります。

うちのネコ
うちのネコ
純粋で素晴らしいですよね。人間って。(一部除く)

結果的に時効が成立したので、橘と鮎美先生は何のお咎めも無く釈放ということになりました。というか、2人は殺していなかったのならもっと前に成立してるってことですかね。

具体的なことは書かれていなかったのでよくはわかりませんが、私としては2人が再開し、もう一度恋人として幸せになってほしいと思いました。でないと2人とも不幸すぎますから。

橘もまだ30過ぎですからまだまだ全然やり直せますよ。この2人は不幸だった分これから幸せになってほしいです。

結果的に死体を隠そうとしたり、偽装工作をしようとしたりしたのは罪かもしれませんが、殺された方も善良な人間というわけではなかったですしね。

ただそんな善良な人間でなかった舞子先生も、突き飛ばされて頭打ちつけて、金庫に押し込まれて、2階から突き落とされて、その後また屋上から突き落とされて…

不謹慎ですが、そこだけ見たら「おいおい」って感じでちょっと笑えます。

面白い小説には、不幸な人が不可欠ですが、この小説はその不幸な人間が多かったです。そしてその分、悪も多い。

今回個人的に怒りを覚えたのは「ハイド茂吉」ですかね。殺人をバラすと脅してレイプするという。読んでいて嫌悪感MAXでした。

ただ最低な人間がいるからこそ、その悪が幸せをより明るくする。そして話が面白くなっていくという皮肉です。

最後になりましたが、青春要素も多く、魅力あるキャラも登場し、どんでん返しもあり。私にとってすごく好きな作品でした。

なお、あとがきを見て驚きましたが、これが横山秀夫さんのデビュー作だそうです。小説に対しての技術的なことは全くわかりませんが、こんな面白い話をデビュー作で書けるなんて天才か!って思いましたね。

うちのネコ
うちのネコ
いや、天才なんですよ