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小説『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午:ネタバレ感想

小説「葉桜の季節に君を想うということ」ネタバレ感想

2004年のあらゆるミステリーの賞を総なめにした作家「歌野晶午」さんの作品「葉桜の季節に君を想うということ」。今回はその感想をご紹介します。

こんな方々のために書きました

  • 「葉桜の季節に君を想うということ」読んだ!
  • 他の人の評価が気になる!

こちらの作品、流石に高評価の声が多く、それでいて「気持ち悪い」と言う感想の方も多いようです。それぞれに対して個人的な意見を勝手に連ねていこうと思います。

結論から言えば、私はかなり好きな作品でした!読んでない人は是非読んでいただきたい!もちろん予備知識なしで読むことをおすすめします!

あらすじ

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。
出典:Amazon内容より抜粋

レビュー・感想

これ以降はネタバレ含みます。また私の解釈が作者の解釈と異なっている可能性もあります。

『これ…騙されない奴いないだろ。』と騙された瞬間に私はつい言葉にしました。

小説を読んで『うわぁ!騙された!』という感動を感じたくて手に取ったこの本ですが、そうゆう意味では大当たりだったわけです。いわゆる「どんでん返し系」の作品、通称【叙述トリック】ですね。

結論から言ってしまえばこの本の最大の特徴は「20代の若者たちの話かと思いきやおじいちゃんおばあちゃんたちの話」と言う目を疑う内容です。

これだけ読めば『いや、そんなの話し言葉とか行動とかでわかるだろ!』と言われてしまいそうなんですが、それがわからないようにできているから凄い。

このようにアニメや実写化にできない小説、と言うのは本当いいですね。大好きです。

で、どうしてこのように騙されたかと言うと、もう最初の十数ページで全読者を1つの世界観に誘い込んでいるんです。しかもたった2文です。それがコチラ。

キヨシこと芹澤清が俺のことを先輩と呼ぶのは、たんに俺が七つ歳上であるからではない。やつは今現在都立青山高校の生徒で、俺は同校のOBなのだった。
出典:歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」より

この2文。この2文のせいで、読者の頭の中では若者たちが様々なことを繰り広げることになるのです。残りの400ページ強を。

ちなみに解説すると、主人公は高校生の7つ歳上。大体23〜25歳ぐらいだなぁとわかります。よって普通に若者の話なんだな、と自然に感じることができる、と言うことですね。

なお、さらにその考えを強める理由もあります。小説の始まりがいきなり主人公のセックスシーンなところや、またキヨシがアダルトビデオを借りられない小心者なところ。この情報だけ見てもいわゆる「若者感」が溢れています。

特にアダルトビデオ借りにくい、と言うのは多くの男子高校生が通った青春の道だと思います。

うちのネコ
うちのネコ
つまり騙された読者はみんな青春時代エッチだったのです!

その後六本木で一杯誘ったり…なんて出てきて『おや、キヨシは高校生なのに大丈夫か?』と思いつつも、『まあそうゆう時代もあったのね』で済ませたくなるほど一瞬。

何よりキヨシの小物感が全ての元凶にすら感じるほど。坊主でモテなさそうな高校生感がたっぷりなんです。実際はアダルトビデオも借りられない小心者のおじいちゃんなんだけど…

ここからはずっと悪徳企業…と言うか超極悪企業の罪を暴こうと、過去の話も織り交ぜ進んでいく展開です。途中、主人公の探偵見習い時期が入りますが、「そこの展開は必要なかったのでは?」と言う意見もちらほら見かけました。

確かに本筋には特に影響せず「ただ【主人公=若者】と言う印象を強めるだけのため」とも感じられるような内容だったので私もその意見には多少理解できます。

ただ、結果としてそれらがあえて本筋からズラしてトリックを見破られにくくする、またはキャラのバックグラウンドを強める、などの効果をもたらしてるので、やはり1つの作品としては必要だったのではないかと思います。

そしてこの後、肝心の「最大トリック」がわかるシーンですが、個人的にはその年齢のトリックよりも先に「あの一言」を聞いたときに、脳が1度停止しました。

「俺の名前って、成瀬って…。あなたは安藤でしょう、安藤士郎」
出典:歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」より

私にとってここがこの本の最大のゾワっとポイントでした。ササッと読み返し、さくらが主人公のことを名前で呼んでいた箇所がないか調べたほどです。脳が混乱し、一種の錯乱状態に陥った瞬間でした。

うちのネコ
うちのネコ
え?じゃあ成瀬という人物は登場しなかった?安藤士郎は死んでない?あれ?成瀬は誰?これって最初から安藤士郎の話だったの??ん?いま何時??

案の定、そんなシーンはなく、さくらは主人公を「士郎」だと思っており、実際は主人公が士郎ではなかったために、全てが終焉に向かう、と言った内容ですね。

全てが終焉に、と言っても実際本の中での終焉は語らえることなく、超悪徳企業「蓬莱倶楽部」との決着は語られていません。

しかし【全ての罪が明るみになり、蓬莱倶楽部の社員は全員逮捕され、裁きが下った】と思うようにしたいと思います。でないと報われませんから。

読者のもう1つのレビュー・感想

この作品の他の方の感想を拝見すると、この「どんでん返し」の小説の面白さの他に、目立つ感想が書かれています。それが【気持ち悪い】というもの。

インターネットの検索でもこの本のタイトルを入力すると、次の予測入力に「気持ち悪い」入ってくるぐらいですからね。

うちのネコ
うちのネコ
グーグル『気持ち悪いと思ったんでしょ?手伝おうか??』

まあ、正直に言えば私も「気持ち悪いな」と思った読者の一人です。

ただ他の人の大体の「気持ち悪い」といった理由が『おじいさんのセックスのシーンなどが気持ち悪い』とか『いい歳して好きだのちょっと引く』のような、おじいさんおばあさんだから、というものでした。

私は別にそこは気持ち悪いと思いませんでした。好きにやらしてあげようよ、の精神です。

ただね。ただヒロイン役(なのか?)の麻宮さくらがやはり不快に感じたんです。私が気持ち悪いと思ったのはそこです。

結果的に主人公の成瀬将虎を好きになってしまい、でも主人公を嵌めるために裏では暗殺計画を進めている…多分主人公が麻宮さくらの本性に気づかなかったら、そのうち殺されてましたよ。

本書ではその後のことが書かれていないので、なんとも言えませんが、きっとまた裏切る。そうとしか思えませんでした。

彼女の立場や精神状態など、もちろん通常のものとは遠く離れたものですので、理解は到底できません。ですが…どうしても信じられないし、仮に信じることができたとしても、それにはかなりの時間が必要だと思います。

そのスタートが本書のラストにつながっているのか。それとも結局一度染まった心は拭えずまた裏切ってしまうのか。

もしかしたら…それがわからないという意味での「気持ち悪さ」も残っているのかもしれません。


まとめ

いかがでしたか?総評としてまとめると以下のようになります。

3行でまとめ!
  • とにかくびっくり仰天!
  • キヨシがとにかくズル過ぎる!
  • 確かに「気持ち悪い」作品かも

前評判に恥じぬ、びっくりなどんでん返しを堪能しました。これはもう感謝しかございませんです。

他にも小説のレビューを掲載しています。お時間ある方は是非ご覧ください。