ガリレオシリーズでもおなじみの東野圭吾さんの長編ミステリ小説「マスカレード・ホテル」。
マスカレードとは英語で”masquerade”と表記し、意味は仮面舞踏会の事です。
また、こちらの小説。2019年1月18日に木村拓哉さん主演で映画化される予定です。
東野圭吾さんといえば様々な小説を出されていて、ドラマ化や映画化なども多くされていますね。私も数冊小説を読ませていただきましたが、安定して面白く常に楽しめる印象しかありません。
本の帯には東野圭吾さんのメッセージにて下記のように書かれていました。
想像力の限りを尽くしたという実感があります。それだけに手応えも十分です。今後同じことをやろうとしても、これ以上にうまくやれる自信はありません。
著者
読む前に非常にワクワクさせてくれるメッセージですね。本が出た2011年のメッセージです。
結果として、実際に楽しませてもらいました!ミステリー小説だったのでトリックや犯人に関してはもちろん驚きました。
しかしそれ以上に、小説の全体的な作りに驚きました。読み終わった後、感心しまくりって感じですね。
あらすじ
東京都内で3件の予告殺人事件が起きた。事件現場に残された不可解な暗号から、3つの事件は連続殺人事件として捜査される。警視庁の捜査本部は、数列の暗号が次の犯行現場を予告するものであると解読し、第4の殺人は高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」で起こると推測する。
捜査一課の刑事・新田浩介は、英語ができる帰国子女であることから、同ホテルのフロントスタッフに扮することになり、新田の補佐・教育係には、優秀なフロントクラークの山岸尚美が任命された。
出典:Wikipedia あらすじより
舞台はタイトルにもあるように「ホテル」です。警察が潜入捜査として高級ホテルのスタッフになるものです。
暗号の内容。そしてなぜ犯行現場が「ホテル・コルテシア東京」だとわかったのか、というのも鍵になってきますね。
ざっと内容紹介
これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。
高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」のホテルクラーク”山岸尚美”。
彼女が誇りを持って働くホテルに、警察から「ある事件を止めるために潜入捜査をさせて欲しい」と要請が入ります。
その事件とは都内で起きた3つの殺人事件。場所も関係性もバラバラだが、被害者の近くには数字を使った暗号が発見されます。それにより同一犯の犯行と見なされていました。
彼女を含め、ホテルの支配人等も他のお客様に迷惑がかかる可能性があることから難色を示しますが仕方なく受け入れることになります。
そこで刑事”新田”の教育に抜擢されますが、彼は刑事のためホテルマンとしては合っていなく、色々苦労する山岸。
その間色々な人がホテルにやってきます。
ホテルの備品を盗もうとするもの。不倫をのためにホテルを使用した男と、それを見つけるために芝居を打った女。視覚障害者のフリをしてホテルを下見する女性。過去にたまたま因縁のあった人など…
また過去にはお客様を守るために、近づこうとした人に嘘をついて追い返す、など。ホテルマンとしての誇りを伝えていく山岸に感心する新田。
彼は犯人を待ちながらもホテルマンとして成長していき、そして山岸とも徐々に心を通わせるようになります。
そして新田から山岸は【なぜ4つ目の殺人がホテル・コルテシア東京で起こるのか?】を聞かせられます。
数字の暗号は日付と場所(緯度と経度)が記されたものだったのです。それにより次の事件が緯度と経度からホテル・コルテシア東京だとわかるのです。
新田の推理と、山岸の女性目線のアドバイス。さらに所外の元パートナーのキレ者刑事”能勢”。そして他の捜査官の活躍もあり徐々に事件が明るみになっていきます。
都内で起きた3つの事件はインターネットの闇サイトで知り合った赤の他人が、それぞれのターゲットを殺し、捜査かく乱のために同じ暗号をわざと使用していたのです。
つまり本人たちは実際の生活では何の関わりもない人たちでした。
その後、別の角度から単独で捜査をしていた新田と能勢は、ある衝撃的な事実を発見します。
以前視覚障害者を装った女性。その女性が今回の3つの殺人を計画した首謀者であり、4つ目の殺人をホテルで行おうとした犯人だったのです。
彼女は2人のターゲットがいました。一人は過去に捨てられた男。そしてもう一人はホテルクラークの山岸尚美でした。
同一の殺し方でも2つの事件を関連させないために、「男に対する殺人事件」と「4件のインターネットで同志を募った殺人事件」を起こしました。
山岸に対する動機として、彼女はかつて山岸に追い出された女性だったのです。
自分を妊娠させて逃げた男性を追いホテルに来ましたが、山岸にストーカーと判断され、嘘をつかれホテルを追い出されました。それが原因で流産してしまうのです。
山岸は騙されホテルの一室で監禁されてしまいますが、寸前のところで新田が救い出します無事犯人の女性は逮捕されました。
レビュー・感想

非常に楽しく読ませていただきましたが、もっと適した感想といえば「すごい小説だったな」という感じです。「おもしろい」よりは「すごい」という感じでしょうか。
理由は全体の構成です。殺人事件を捜査しながらもホテルマンの日常って感じでお客さんとのやりとりが描かれている。そしてところどころ出てくる新田と山岸のちょっといい感じのやりとり。そしてそれを最後にしっかりとまとめ上げる。
途中で全然関係なさそうだったものが、最後で重要になったり、些細な出来事が解決のヒントになったりと。それをホテルマンとして自然に出してくるところが読んでいて感心しました。
ただそれゆえに「うーん」となってしまったのも事実です。最後は事件に関係あったから驚きましたが、読んでいる間は退屈に感じてしまいました。
ミステリー作品を読んでいるのに、ホテルマン奮闘記みたいな内容で、『殺人事件と関係ないのに何を読んでるんだ私は…』という気持ちにもなってしまいました。
今回殺人事件よりも話のメインとなっていたホテルの話。単純に「ホテルにはいろいろな人が来るのだなぁ」とただただ驚きました。
またしても本の帯の話ですが、そこには「様々な仮面をかぶった人間がやってくる」と書かれていました。まさにその通りですね。特に高級ホテルとなればその仮面も厚い、もしくは複数なんてこともざらにありそうです。
そしてこんなことも書いてありました。「彼女の仕事は、お客様の仮面を守ること」。
ただこの彼女の仕事についてはイライラしました。山岸さんの仕事ぶりに関してですね。
果たしてどこのホテルがどの程度なのか詳細はわかりませんが、ホテルの仕事は仮面を守ることなんですかね?
今回の事件に関しても、結果的には山岸さんの機転が犯人の動機につながってしまってました。もちろんだから山岸さんが悪いというのは全く思っていませんが、個人的には余計な行動だと思います。
結果的にそのホテルマンの判断になるんですよね。このお客様はストーカーだ、とか危険だとか。それってある意味めちゃくちゃ危険だし正確性も乏しい気がします。
それに先に泊まっているお客様が不快な思いをしないように、後から来たお客様を泊めさせない、っていうのも随分一方的だな、と。
もちろんサービスは求めますし、心地よくホテルで過ごしたいという気持ちはあるので、そうゆう意味ではお客様を守るというのは間違ってないと思いますが。いろいろ判断されてしまうのはどうなのかなと。
やっぱり個人的には「全部教えないし、受け付けない!」ってスタンスがいいと思いますね。例えば「こーゆう女が来たら教えてくれ」と言われても「そうゆうのは全部無理です」でいいと思います。差別化図ってサービスの一環とか防犯上のためと言われたらそれまでですが、やはりホテルの役目はそうではないなと思わせられましたね。
少し脱線しましたが、今回の事件の犯人がわかった時、ドーンときました。
それはあの一言『先日もいらっしゃった片桐瑶子様です』のトコですね。
片桐瑶子は目の不自由なふりをしていた女性でしたが、それが偽りだとわかってこの話はもう終わった、と思いきやまさかの真犯人!ここは綾辻行人さんの著書【十角館の殺人】と同じような衝撃がありましたね。
なんか今回の犯人は話だけ聞いてるとかわいそうな感じもしました。そして相当頭いいな、とも思いましたね。
このマスカレードホテル、映画化されると言うことで小説とどの部分が同じでどの部分が違うのか気になります。新田役は木村拓哉さん、山岸尚美役は長澤まさみさんらしいですね。
個人的には新田はもう少し若いイメージがありますが、キムタクならカッコよくやってくれるでしょうね!映画見たいなと思います!
