小説『白夜行』東野圭吾:ネタバレ感想。不幸なのはこの2人じゃない

東野圭吾の小説「白夜行」

作家「東野圭吾」さんの名作として有名な「白夜行」。

800ページ以上というかなり大作。数日で一気に読ませていただきました。今回はその感想をご紹介します。

  • 「白夜行」読んだ!
  • 他の人の評価が気になる!

そんな方はぜひご覧ください。なお、小説のボリューム同様、感想も長くなってしまいました。それも踏まえて、ぜひお付き合いください。

あらすじ

1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。しかし、何も「証拠」はない。そして十九年の歳月が流れ……。
出典:集英社 作品あらすじより抜粋

レビュー・感想

これ以降はネタバレ含みます。また小説の性質上、私の解釈が作者の解釈と異なっている可能性もあります。

『東野圭吾さんの作品の中でおすすめは?』という質問に多くの人があげるのがこの白夜行でした。

実際私も後輩からの推薦で読ませていただいた作品。またアマゾンでのレビューの高さに、読む前からかなり期待感が高くなっていました。

また、日本だけでなく韓国でも映画化された、という情報も聞いており、さらにさらに高まった期待感。元々、東野圭吾さんの作品は過去に数冊読んでおり、かなーり面白かったのを覚えていました。

ここまでくると期待というよりも『絶対面白い小説が読めるんだ、僕って幸せ!』ってところから1ページ目をめくった感じです。

そして読み終わった読みたてホヤホヤの感想は【不快】。この2文字です。

正直なこと言ってしまえば、この作品を「最高傑作です!」なんて言っている人は、どこをどう見て最高傑作と言いたいのか、小一時間問い詰めたいぐらい。逆にいえば「この作品は不快です」と言っている人には、美味しいパンケーキでも食べながら三時間ぐらいあーだこーだ言い合いたい、そんな感じです。

順を追ってつらつらと書かせていただきます。

世間の評価

まずこの白夜行の評価、非常に高いんです。

その理由を探るため、小説を読み終わった後にAmazonのレビューや、個人でやられている読書感想ブログなんかを散策し、皆さんの評価や感想を読んでみました。なんならYouTubeでレビューをしている方のもみましたが…

まず多かったのが『800ページ越えですが引き込まれます!』とか『一度読んだら没頭します!』というような感想。

これは確かに私も思います。多分1冊のボリュームとしては人生過去最厚であろう厚さで、ちょっとした辞書みたいな感じです。私自身もこれを苦になずに読み終えたので、引き込まれたうちの一人でしょう。

これはもう東野圭吾さんの小説としての巧さなのかな、と感じましたね。徐々に明らかになる内容や、新たに起きる謎がページをめくると見えてくるので、必然と手は止まらなくなりました。

またこの本は厚さに比例するかのような「スケールの大きさ」にも高評価を挙げている方がいました。

これは1973年から1992年の【19年間】が詰まっている作品で、その中にかつての日本で起きた出来事やブームがちょいちょい登場します。よって読み終わった後に「長いストーリーを走りきった(見届けた)」というような達成感のようなものが込み上げてきました。

次に目を引いたのは『主人公2人の闇が深かった。』や『2人の生き方が悲しかった…』というような感想。

この2人の根底にあったのは1973年の質屋殺人事件。そこから2人の中で何かが壊れ、何かが生まれた瞬間でもあります。(雪穂自身はそれ以前から心が病むような体験をしていますが)

そこから2人は闇の中の人生を進んでいくことに。その中で他の方もあげていた2人印象的なセリフがこちら。

「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなものやからな。」
出典:東野圭吾「白夜行」より

「私の上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることができたの。あたしには最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの」
出典:東野圭吾「白夜行」より

これらのセリフ通り様々な事件や出来事が彼らの周りにありました。そしてこの2人に対し『切ない』『悲しい』と言った感想も多く見かけました。

最後に評価の中で気になったのは『ドラマ版を見て原作を読みましたが、原作は深かったです』というような感想。

ご存知の方も多いと思いますが、この作品は映像化され、特に山田孝之・綾瀬はるかのドラマはかなり評価が高かったようです。(私は未視聴です)そこから『原作も読んでみよう!』なった方が多いようです。

小説の中では、2人のうちどちらかに関わる相手が次々と不幸になっていきます。そしてその理由や動機、はたまた誰がやったのか、という部分もモヤモヤしたまま明らかにならず話が進んできます。

よって読者はそれを想像しながら読み進めていくわけです。それはこう言った小説を読むときの醍醐味と言ってもいい、読者にとってとっても楽しい時間な訳なんですが…

白夜行。これが微妙すぎると私は思いました…

個人的な評価

白夜行がこれほどまでに高い評価を受けていること。これが本当にわからないんです。

まずやはり触れなきゃいけない桐原亮司と西本雪穂に関して。彼らは自分たちのことを闇の中で歩いてきた、というように話ます。それは読者に「彼らは悲劇によって望まぬ闇へ」のように書かれています。

確かにそうです。幼少期の彼らは完全に被害者で、悲しく辛い思いしかありません。

雪穂に関しては完全な「悲劇」です。これはもう胸が痛くなるほどの「悲劇」。そしてそれを行なっていた男たちには本気で虫唾が走るほどの嫌悪感MAX。

そして、複雑な環境で育ち父親の最悪な部分を見てしまった亮司。父親を殺したことは、決して「正しいこと」とは言えないかもしれませんが、個人的にはよくやったと言いたくなります。

子供の頃にこんな出来事をした2人にとって、その後の人生が普通の人のように明るい人生とはならない、まるで白夜の中を歩くような…そんな気持ちは理解できます。

ただその2人のせいで、白夜ならぬ「真っ黒な闇の底」に落とされた人の気持ち、考えたことあるんかい。

【彼らの心情は出てこない】ということを踏まえた上でも、全くこのことが理解できない私。この本を読んで『切ない』『悲しい』と言っている人は、彼らのこと全く見えてないのではないか?

レイプ未遂をされた友人の江利子。彼女はその後結婚し幸せになったかのように見えますが、心の傷は深く残っています。

そして雪穂のことをいろいろ調べていた探偵の今枝。彼の消息は結局最後まで出てきませんでしたが、推測するに亮司に殺されて埋められた、という線が強いでしょう。

しまいには雪穂の義理の娘となる中学生の美佳。彼女は実際にレイプされてしまいます。彼女のその後の心情は深く出てきていませんが、心の傷は確実に残っているはずです。いや、残らないはずがない。

これをしでかした亮司と雪穂を見て、それでも2人を『悲しい』と言えるのか。

言えないだろ、悲しいのは巻き込まれた人たちだよ!

この他にもたくさんの不幸がありました。個人的に特に胸が痛くなったのは亮司と同棲した女性「典子」。彼女はササガキ刑事がきた際、このように心情を語っていました。

しかしあの写真の人物が秋吉であることを話すと、秋吉にとって取り返しのつかない結果になるような気もした。もう会えないと覚悟していても、彼は彼女にとってこの世で最も大切な人間だった。
出典:東野圭吾「白夜行」より

男女関係で惚れさせたから悪い、と言いたいわけではありません。ただやはり利用されてしまった人を見ることは気持ちいい話ではないです。

この自己中心的とも取れる2人の行動。それが私にとってこの小説の1番の印象であり、それが【不快】でした。

そしてこのドラマの特徴である「亮二と雪穂の接点や心理描写がない」という点。

読んでいる側は「この2人に関連性はあるのか…?」→「ま、まさか…」という感じで「徐々に繋がっていく」感覚に感動した、という方もいたようです。

これは確かに面白かったと思います。ただこれがすごく微妙だと感じた理由は…

2人の何らかのつながりがあるであろう、というのはかなり序盤から分かることでしたよね?

雪穂が学生時代パッチワークで作った小物入れ。そこにはRKとイニシャルが入っており、雪穂は母親の「レイコ」のRと言っていました。そしてその後、亮司がRKとイニシャルの入った小物入れを持っています。

ここで大部分の人が『あ、これは雪穂からのプレゼントかもな?』と感じたはず。するとここで「雪穂と亮司は何か繋がりがあるのかも?」とほんのり見えてきます。

ちなみにこれ、二章です。十三章あるうちの二章です。つまりすごく序盤なんです。

そしてその後色々な事件があり、雪穂と亮司の繋がりがある、という信憑性が徐々に濃くなっていきます。ただし明言はありません。

だから何かあっても『あーこれ亮司が裏で何かやってるんかな?』と強く感じてしまうんです。だから結果的に亮司がやっていた、と言われても『でしょうね!』なんですね。

でも、先ほども言った通り、そのような描写は描かれてないし、雪穂や亮司から「あいつのために」というようなセリフもない。だから、私は途中から別の方向で考えて読んでたんです。

それは、亮司が雪穂のためを思っていろいろ裏で動いていたが雪穂は何も知らなかった、というものです。

つまりパッチワークも偶然似たものを持っていた。雪穂の周りで起きたことも全て雪穂は全然関与していなかった。雪穂は桐原亮司なんて全く知らない人間だった、と。

もちろんそう考えるのは無理があるところもありますが、彼らの接点が描かれていない以上、この可能性は十分あるのではないか?と思ったわけです。

雪穂がすごく周りの人間から褒められるのもそう思った1つの理由でもあります。憧れの女性、完璧な女性。『そんな人いないだろう、こいつは本当は悪のような女なんだ!』と思わせるミスリードをしておきながら、実は雪穂自身その通り素晴らしい女性だった、という。

というか、そのぐらいないと何とも盛り上がりがないなぁ、と思ってしまったのも事実。もちろん、私が予測できなかった部分もありましたが、小説全体の衝撃度で言えば「弱い」です。

読み終わって気づいたこと

読んでいる間は気づかなかったですが、読み終わった後に他の方の感想を見て気づいた箇所があります。

もしかしたら気づいていなかった方もいるかもしれないので一応ご紹介します。

友彦を助けた女性は?

亮司とともにカード偽装を行ったり、違法ソフトを売ったり、最終的にはパソコンショップを彼女と切り盛りした友人の「園村友彦」。

彼は主婦と高校生が体の関係になる、というバイトとして桐原に連れてこられましたが、その後そこで知り合った女性と関係を持ち続けます。そしてある事故でその主婦が死んでしまい、友彦が容疑をかけられてしまいそうなピンチに陥ります。

しかしそれを亮司は助けます。自分の精液を使い友彦を容疑から外れるようにし、さらに彼女が死んでいる時間帯に別の女性を使ってアリバイを作る、と言ったものです。

この時の死んだ女性になりすましたのが「雪穂だった」ということ。

私は全く気づきませんでした。この時亮司は「英語弁論大会の関係者」として雪穂に連絡し、夜抜け出しなりすましたようです。

雪穂と亮司に体の関係は?

これも例の如く描写はありませんは、あったという説が濃厚そうです。

その根拠となりそうなのが、亮司が典子と同棲しているときのこと。亮司はかつて父親が雪穂に迫っているところを見たショックから「女性の膣内に射精できない」という体になってしまいます。

そして典子に対し「口と手」を使ってしてもらおうとしますが、そのとき亮司は典子の手を見て「小さいんだな」と言います。そして典子も「他の女性と比較された」と感じます。

この典子の考えが当たっていれば、亮司は誰かと比べている。それは雪穂ではないか、というものです。

この裏付けとして、雪穂がかつて結婚していた高宮誠との夜の生活でうまくいかなくなったとき、彼はこのように言っています。

セックスができないなら、せめて口や手を使って愛情を表現してほしかったが、雪穂は決してそうゆうことはしない女だった。
出典:東野圭吾「白夜行」より

雪穂はそもそもこの高宮誠という男性を好きではなかった、という描写がありました。このことから、雪穂にとってそうゆう愛情表現は本当に好きな人にしかやらない。そしてそれは亮司だったのではないか。

推測の域は超えられませんが、この考えは当たっているのではないか、と思います。

ドラマ版との違いは?

ドラマは見ていませんが、内容を見るに大きく違うようです。

最も大きいのは「ドラマ内では亮司と雪穂が会っているシーンが描かれていること」。

やはり亮司と雪穂の心理描写がない、ということや2人が会っているシーンがあるか無いかで全然違った印象になります。

よって「ドラマ+原作」または「ドラマのみ」を見た人と、「原作のみ」で見た人の中には感じ方がいろいろ違うのでは無いかと思います。

まとめ

世間の評価の通り、かなり引き込まれた作品でした。しかし「最高傑作か?」「死ぬまでに読んでおくべき本か?」と言われたらNOです。

しかしこのように「人の感じ方」と「自分の感じ方」を測る、という意味では非常にいい経験ができたと思います。

他にも小説のレビューを行なっています。お時間ある方はぜひご覧ください。