小説『KAPPA』ネタバレ感想。犯人は河童?それとも…

みなさん、河童ってご存知ですか?

柴田哲孝さんのミステリ小説「KAPPA」。英語で書いてありますが、これは河童のことです。そうです、あのカッパです。

河童は日本の妖怪として有名で多くの人が知っていると思います。頭に皿が乗ってて口が尖ってて手や足には水かきがついていて…

マスコットキャラや日本酒「黄桜」のキャラとかにもなっていますね。河童は妖怪といっても可愛らしい部類に入るようです。

うちのネコ
うちのネコ
一番有名なのは「かっぱ寿司」じゃない?

しかし実際に言い伝えられている河童は結構危ないやつのようです。Wikipediaの情報によると、友好的な面もあるとしつつ…

一方で、水辺を通りかかったり泳いだりしている人を水中に引き込み、おぼれさせたり、「尻子玉」(しりこだま。尻小玉とも書く)を抜いて殺したりするといった悪事を働く描写も多い。
出典:Wikipediaより

さて、この小説は河童を題材にしたミステリ小説です。それでいて冒険小説のようでもあります。

タイトルに惹かれて読ませていただきましたが、私は非常に好きな題材で、読んでいて楽しめました!

特にオカルトが好きな方にはオススメですね!

あらすじ

ブラックバスを釣りに来た男が、上半身を引きちぎられた死体で発見された。猟奇殺人なのか?地元署の捜査は混迷、難航。宿無しルポライターと引退間近の老漁師、引き籠もりの少年、はみ出し者の田舎刑事が、事件の謎を解くために活躍する。少年と男たちのひと夏の冒険縹。
出典:文庫本 背表紙より

職業や年齢のバラバラの男たちのものがたり。そして何よりひと夏のっていうのが良くないですか?

ざっと内容紹介

これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。

茨城県の牛久沼であるクラブのオーナーがバス釣りの大会を開催する。

しかしその途中、一人の中年男性が沼にいた”何か”に襲われて行方不明になってしまう。

それを目撃したオーナーは「白く、四角い顔・尖った鼻先・耳まで裂けた大きな口と小さな目・岩のように、ゴツゴツとした背中・頭の上にある、黒くて丸い皿」という外見の特徴から「河童」に襲われたと通報する。

そして襲われた男性が発見される。彼は体の上半身が引きちぎられた状態で発見される。しかもその破損部分は発見されなかった。

刑事の”阿久沢”は河童のことは本気にしないまでも、その特徴から普通の事件ではないのでは、と考えるようになる。

その事件をニュースで知ったルポライターの”有賀雄二郎”は犬の相棒”ジャック”を連れて河童の正体を暴きに行く。

そして知り合いの川漁師の老人”源三”と会い、そのつながりで引き籠もりの少年”太一”と出会う。

有賀は太一を含む地元の少年たちから情報を集め「河童の正体は恐竜のようだった」ということと「2年前にある老人がブラックバスを買っていた」という2つの情報を得る。

その老人に会うために人工の無人島に有賀と源三は向かう。そこで発見できたのは河童と思われる生物を飼っていたと思わしき、白骨化した老人の死骸だった。

その頃、沼ではもう1人の死体が発見された。それは最初の事件を通報したクラブのオーナーであった。そしてその死体も体の一部が欠損していた。

その後、刑事の”阿久沢”は有賀に協力を要請し、共に河童を追うことになる。

有賀は離婚した妻との間の子”雄輝”が、伊豆で大きなスッポンを見たことがるということを聞き、亀の水族館や向かう。

そこで発見したのは、目撃された河童の特徴と完全に一致した大型の亀”アリゲーター・スナッパー・タートル”だった。

うちのネコ
うちのネコ
通称ワニガメです

有賀と阿久沢、源三と太一は4人で協力しワニガメ捕獲作戦を立て、実行し、見事捕まえることに成功する。

捕まえた生物はやはりワニガメであり、2件の殺人事件はワニガメによる事件だったと結論に至り解決となった。

レビュー・感想

皆さんはオカルトとか好きですか?個人的な考えですが、好きという方は男性のような気がします。

私はオカルト…というか未確認生物みたいなのがすごく好きですので、この小説を知った時はすぐに読みたくなりましたね。

ただこの小説の著者である柴田哲孝さんの作品「TENGU」を先に読んでおり、その後その前にもあったのか!と知り読ませていただきましたが…

河童の存在、登場キャラの魅力、沼という描写。懐かしさであったり、夏の解放感であったり、そうゆうのが思い浮かべることのできる、どれを見ても良い作品でした。

特に有賀に関しては自分のことをよく理解して、情もあり、頭も良く、裏表もない。魅力的な男でした。

うちのネコ
うちのネコ
ただ年齢が自分と同じということを知り、自分もおっさんなんだなと再確認

ただ、河童の正体に関しては、正直ガッカリだったというのが本音です。もうここまできたら河童を出して欲しかった。

そしてその正体がワニガメだった、というのも残念でした。

こちらの小説が発行されたのが1991年ということで、当時はワニガメは珍しかったそうです。今では結構メジャーですので【ワニガメ=河童】と言われても『無理あるだろっ』と思ってしまいますが。

ワニガメ画像はこちら

ただ、最初から「河童かもしれん!」という流れ進んでいたのは読んでいてずっとワクワクできました。

もしかしたら…っていうこのワクワク感がこの小説の一番の魅力かもしれませんね。

そして、個人的にお気に入りのシーンがありました。

それは家族を持ち、警察という組織に属する阿久沢と、気ままな仕事をし、キャンピングカーで生活をする有賀の会話です。

阿久沢は自由について有賀に聞きます。

自分は自由な人生は送れない、自由になった瞬間に不安になる。自分は強い人間ではない、と言います。

それに対し有賀はこのように言います。

俺も以前は、自由でいることは男の強さの証明だと考えていた時期もあった。つまり家庭とか、財産とか、社会的な信用とか、守るべきものがひとつずつ増すごとに男は少しずつ弱くなっていく。
本書より引用

そしてそれは逆だったとも言います。守るべきものがあるから人間は強くなれるんだと。これは彼が体験したからこそ言える台詞ですね。

結論として男はみんな弱いものだと2人は言います。

うちのネコ
うちのネコ
完全同意。私なんてゲキ弱。

こんな風に河童にまつわる話だけでなく、同じ男として色々考えさせてくれる小説。楽しめました。

次に続く「TENGU」など、ルポライターの”有賀雄二郎シリーズ”は続きますので是非読みたいと思います。

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