実話をもとに描かれた、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人の友情の映画、グリーンブック(原題: Green Book)をご存知ですか?
って映画が好きなら知らない人は少ないでしょうね。なんてったって2018年のアカデミー賞で3部門を受賞した名作とも言える作品ですから。
なお、2人の友情を描いた感動作という風になっていますが、ジャンル的にはコメディーも入るようです。
この映画、実はみんながみんな『良い!』と言っているわけでは無いようで…疑問の声をあげた人もいるよう。
その理由が…「白人の救世主」という言葉。
白人の救世主とはなんなのでしょうか?
あらすじ
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。
出典:シネマトゥデイより
ざっと内容紹介
これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。
ナイトクラブで用心棒をしているイタリア系白人のトニー。
ある日、彼が働いているナイトクラブは改装工事のため閉鎖されてしまい、新しい仕事を探すことになる。
そこで8週間のコンサートツアーの運転手を探しているアフリカ系アメリカ人ピアニスト”ドン・シャーリー”の仕事を紹介される。
仕事の内容から一度は断るトニーだったが、給与面や仕事内容、そしてクリスマス・イブまでに自宅に帰る、という条件を出し、それをドンが承諾し共にツアーに出ることになる。
ドンのレコードレーベルはトニーに、アフリカ系アメリカ人の旅行者がモーテル、レストラン、給油所を見つけるためのガイドである「グリーンブック」のコピーを提供する。
最初は互いにぶつかり合っていたが、いろいろな出来事を経て2人は友情が芽生えていく。
ツアーの最中、トニーは妻に手紙を書いていたが、あまりにも幼稚な内容だったためドンが手紙を書く手助けをする。
その内容にトニーの妻は喜び、トニー自身もドンに感謝する。
ツアーの最終日、白人専用のレストランに入室できないことに納得できないドンはドタキャンする。
その後2人はクリスマスまでに帰るという約束を果たして、最後はトニーの家族とドンと共に幸せなクリスマスを送る。
レビュー・感想
まずは予告編をちょっと見てみましょう。こちらが予告編です。
うーん、良い。これは見たくなる良い予告編だと思います。
まあほとんど内容は予告編にあったような感じで、大きな展開がある映画では無いので、そのまま誰でも楽しめる映画だとは思いますが…
実はこれ、一部を除いた場合です。
ざっと紹介では、本当にざっとしか紹介できませんでしたが、実際は様々なことがありました。
特に多かったのが、黒人差別のシーン。
警察官に止められ、雨の中車の外に出される。白人専用で入店できない。黒人だから泊まれるホテルが限られる、など。
近年でも未だに警察官による差別が時々報道されたりしますが、たとえ映画でもこれは非常に胸くそ悪い。
そしてさらにムカつくのが「白人専用」のレストランで働いているウェイターがみんな黒人。
店のルールももちろん腹立たしいですが、そうやって雇用を決めている感じもより腹立たしい。
つまりはこの映画の根底にあったのは、やはり「黒人差別」という問題な訳です。
そしてこの映画では問題をトニーが友情という形で助けた。
そこに賛否の【否】を唱えた人がいたんですね。
その理由は「結局白人が黒人を助けてヒーローとなる」ということ。
これは「白人の救世主」と言い、英語では”white savior”と表記します。
詳しくはこちら↓
結局白人目線なのではないか、と。きっとこんな感じで考えた場合です。
黒人が差別されている
↓
白人が助けてあげる
↓
さすがだね!白人、ありがとう!
ただし、忘れてならないのが「白人は差別して最悪だ」ってことも併せてメッセージにもなっている点。今の若い人でも『昔はあんなに明らさまな差別があったのか』と知ることができた点。
それを考えると、『これは結局”白人の救世主”映画じゃないか!』とは言えない、というのが私の感想。
確かにこの手の映画は多いと思います。やはり歴史上あったことですしね。言われてみればそうだな、という感じです。
でも今回のは「実話をもとに」と言ってますしね。描くポイントが「トニー側」だったのか「シャーリー側」だったのか、の違い。その違いはあれ、見ている人は感動し、過去の事実を知ることができた。
なのであれば私はこの映画に賛否の【賛】を唱えたい。