インターネットで「オススメの推理小説は?」と検索すると、高確率で紹介されているのが推理作家・綾辻行人さんの著書で長編小説の十角館の殺人。
こちらは全9作品ある「館シリーズ」の一作目の作品です。この本が世に出たのはなんと1987年!30年以上前の作品ですね。そして綾辻行人さんのデビュー作となっています。
この小説、とにかくおもしろいんです。ええ、そうなんです。本気でおもしろい推理小説なんです!
インターネットでおすすめされている理由がわかりますよ。そして私もオススメしますよ。推理小説が好きな人は読まなきゃダメな作品ですよ!
あらすじ
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!
出典:講談社文庫 作品内容より
ざっと内容紹介
これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。
ある無人島に7人の大学生が行きます。彼らは大学のミステリ研究会のメンバーで、それぞれエラリイ・アガサ・カー・オルツィ・ヴァン・ロー・ルルウ、といった有名な推理作家の名前がニックネームとしてついています。
彼らの目的は島にある館。その館とは建築家「中村青司」のいう人物の起こした事件のあった場所でした。また島には「十角館」と呼ばれる館も存在し、彼らはそこで寝泊りをします。
それと同時期、元ミステリ研究会の江南の家にある手紙が届きます。その手紙には『お前たちが殺した中村千織は私の娘だった』という謎めいた文章が記され、差出人には「中村青司」の名前が。
中村千織は元ミステリ研究会の一員でしたが、不慮の事故で亡くなってしまっていました。
そして島では殺人事件が発生し、7人が次々と殺されてしまいます。
また本土では江南がミステリ好きの「島田 潔」と、友人で同じく元ミステリ研究会の「守須」でその手紙の差出人と真実を暴こうとします。
結果として中村千織は中村青司の娘ではなく、中村青司の妻と弟の中村紅次郎の間に生まれた子でした。
そして島では6人全員が殺されてしまいます。そうです、7人行っていたはずなのですが6人=全員ということになっており全員死んでしまったのです。
そして検視の結果、ひとりが自分以外の全員を殺し、最後は自分も焼身自殺して終わった、と結論づけられました。
しかし、真相は7人目が全員を殺しました。そしてその7人目は「ヴァン」というニックネームで本名は「守須」でした。
つまり彼は島と本土を行き来し、アリバイを作りつつ全員を殺害したのです。彼の動機は亡くなってしまった恋人「中村千織」の復讐でした。
レビュー・感想
推理小説のおもしろさってなんでしょう?
犯罪の方法や、犯人の動機。または探偵や警察の謎を明かすところ、などありますが、つまりそれは「どれだけビックリできたか!?」ってことだと思います。
その基準で言ったら、この小説は最高の小説といえます。一番のビックリポイントで、私はビックリに気づけないほどビックリしましたからね。
そのビックリポイントとは、そう。あの一言。「ヴァン・ダインです」でしょうね。
「他の人と同じ感想でつまらない」と言われようとも、あの一言は衝撃的でした。あの一文を読んだとき、私の脳は一瞬止まりましたからね。
本を読んだことある方なら、『モーリスって誰だよ!』ってツッコミが入ると思いますが、そのくらい衝撃なんですよ。一種の錯乱状態なんですよ。その後、数ページ読み直したのは言うまでもありません。
この小説の特に秀逸なところ、2点あります。
登場人物のニックネーム
メインの登場人物たちにはニックネームがあり、物語の後半まで本名が出てきません。
それがこの小説の最大のトリックとなるわけですが、その使い方が上手すぎるんです!まさに小説でしか表現できないと思います。実写では無理です、きっと。
小説を読んでいると誰もがしてしまうであろう、自分の頭の中に創られる登場人物のイメージ。そのイメージが別の人間と同一人物だった!っと知った時の衝撃。これはもう快感です。
舞台は2つ
もう1つの特徴として、「殺人事件のある島」と「日本本土」という2つの場面で話は進行していきます。
やはり読んでいて引き込まれてしまうのは「島のほう」なんですが、いい感じで「本土」のほうも真実を盛り込んできます。
ここで素晴らしいのが、本土のほうで結構大きな事実が発覚するんです。すると本土の役割は終わったと思ってしまい、注目度が下がるんですよね。で、メインのほうは…なんて読んでると、まさかの本土に犯人いた!という。
完璧に作者の思惑に引っかかったカモでした。それがいいんですけどね。
ただし気になったのはやはり動機です。トリックにビックリした分、なんだか動機のほうもとんでもないものを期待してしまいましたが、好きな女性のための復讐という結構シンプルなものでした。
よーくよく考えると、確かにいてもいなくてもいいようなキャラだったんです。なので後々考えると何となくわかるんですが、読んでいる間は全く気づけない。不思議な世界にどっぷりです。
作品を通じて絶妙に表現しています。Aに気を取らせ、Bが全く気づけない。いわゆるミスディレクションというやつですね。
黒子くんが幻の6人目(シックスマン)と呼ばれた理由もわかりますよ。
ということで、「十角館の殺人 」を読み、絶対に9作品読ませていただきたい!と思いましたね。残り8作品もレビューします!
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