ミステリー小説が好きな方は読んでない人はいないであろう有名な「館シリーズ」。綾辻 行人さんの著書でシリーズ3作品目の作品です。
十角館、水車館と続き、今度は迷路館です。家の中が迷路のようになっており、その中で賞金をかけたコンテストが開始されます。
今回の迷路館の殺人は、館シリーズでもかなりの傑作と聞いていました。なんと1作目の十角館の殺人と同じぐらいの衝撃だとか…
さて、実際読み終わった感想は? はい、もうぶったまげましたね。とにかくすごく面白かったです!
とにかく読んでない人は絶対にこの記事を読まないほうがいいです!少しでも予備知識あると、おもしろさが半減してしまいますよ!
あらすじ
複雑な迷路をその懐に抱く地下の館「迷路館」。集まった4人の推理作家たちが、この館を舞台に小説を書き始めた時、惨劇の幕は切って落とされた! 密室と化した館の中で起こる連続殺人。真犯人は誰か? 随所にちりばめられた伏線。破天荒な逆転につぐ逆転。作中作『迷路館の殺人』が畏怖すべき真相を晒した後、更に綾辻行人が仕掛けた途方もない2つの罠!
出典:講談社文庫 作品内容より
ざっと内容紹介
これ以降はネタバレを含みます。ご注意ください。
推理作家界の巨匠・宮垣葉太郎は自分の誕生日を祝うパーティを4月1日に行います。
パーティーに招かれたのは4人の弟子の推理作家や評論家、編集者、そして館シリーズではもうおなじみ島田潔。
しかし約束の時間を過ぎても宮垣は現れません。そこへ秘書の井野が現れ、宮垣が今朝自殺したと告げます。
4月1日だったためエイプリルフールネタだと思った一同でしたが、死体と遺書、そして彼の主治医がいたことによりそれが事実だと知ります。
しかも宮垣は1本のテープを遺していて、そのテープの内容は【5日後まで、警察に通報してはならない。その5日間のうちに館に滞在する弟子作家4人は、“迷路館”を舞台とした、自分が被害者となる殺人事件をテーマとした小説を書け】というものでした。
しかも最も優れた作品を書いた人には遺産の半分を相続する権利を与える、ということでした。
普通ではないことだが、多額の遺産に目の眩んだ弟子たちは各々執筆を始めます。
しかしその4人が次々と殺されてしまうのです!しかもその殺され方は、各自が書いた小説になぞられていました。
館を出るためには鍵が必要でしたが、その鍵を持っている秘書の井野はいない…よって犯人は井野ではないかと皆が疑いました。
様々な証拠を集めて島田潔は犯人を追い詰めます。そして発見したのは殺された井野と、自殺している宮垣葉太郎でした。
つまり宮垣葉太郎が最初に死んだというのは実はフェイクで、彼が館の秘密通路を使って各弟子を殺したのでした。
しかしここで終わりではありませんでした。
実は宮垣葉太郎が犯人というのは「小説の中の話」だったのです。実際の犯人は評論家の鮫島でした。しかしそれは公表はされずに終わります。
そしてその小説を書いた人物はペンネーム「鹿谷門実」。そして鹿谷門実は島田潔だったのです。
レビュー・感想
まず、ざっと内容紹介を読んでいただいた後に、本を読んだことある方は『ざっくりしすぎだろ!』と言われると思いますが…
でも。でもですね。あの内容を文字にして説明しようとしても、難しすぎます。なので許してください。
今回の舞台は迷路館で、またまた建築家「中村青司」が設計した屋敷の1つということでしたね。館シリーズを読んだことある方は、隠し扉や隠し部屋があるだろうなと思っていたでしょう。もちろん私も思っていました。
今回の建物の特徴として、個人的にはもっと「迷路特有の難解さ」があっても良かったかなと思いました。
例えば、迷路に迷い込むと二度と出られない(ような)仕組みになっている、とか。迷路の先には宝箱がある、とか。
多少は迷路を活かしたトリックもありましたが、もっと色々見てみたかったですね。
さて、今回の一番の驚きのシーンといったら…といいたいところですが、驚くシーンが1つではありません。何度も騙されました。
まずは「犯人の性別」に関してですね。非常に単純といいますか、ちょっと考えればわかることなんですが、完璧に騙されていましたね。
まさか評論家の鮫嶋先生が女性だったとは…先入観というのは怖いですね。 何の疑いもなく、男性だと思っていました。
評論家と聞くと男性のイメージが強いということでしょうか。また個人的な偏見も混じっていますが、鮫嶋って名前がなんか強そうで…
2つ目の驚きは「本の中に本が書かれている」という内容、いわゆる作中作です。
これが非常に上手く作られていて、途中であとがきや小説の終わり部分である「出版社の名前」などがでてきたとき『あれ、これなんか印刷ミスかな?ページまだ余ってるけど…』と本気で思いましたね。 この書き方はすごく楽しめました。
ただ気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回引用させていただいた本のあらすじに「作中作」の文字があります。 これって読む人にとっては非常に大きなネタバレになってしまうのではないでしょうか?
確かに今読み返すと目次がこのようになってます。
プロローグ
『迷路館の殺人』鹿谷門実
エピローグ
ここで『なるほど、本の中に本なのね』と気付く方もいるかもしれませんが、私に言わせたらその人は天才ですよ。私は全く気づきませんでした。
全てを理解した後に『これは作中作だったのか!?』と感じたほうが気持ちいいと思いますが、 読む前から『ほうほう、作中作ですか…』という気持ちだと驚きも半減してしまいそうです。
確かに冒頭部では作中作とわかる書き方でも書かれていますが、そうでない方向でもとれます。 個人的には「作中作」というの知らないほうが楽しめると思いますし、現に読む前に知らなくて良かったです。
最後はやはり「島田兄弟」でしょう。最初と最後が丸々「島田の兄」の目線で書かれているなんて。ホント見事だなーと思いました。
そして本の中に出てきた本の作者は「鹿谷角実」となっていましたが、まさかそれが島田潔とは全く思いませんでしたね。
「十角館の殺人」「水車館の殺人」を読んで、彼が小説を書くタイプのようには感じなかったので、完全に不意を突かれました。 これは1作目2作目を読んだことある人のほうが引っかかりやすかったのでは?と思いました。
ここからは大いにハズレまくった私の推理を少しだけ紹介します。
※素人の浅い推理ですのでツッコミは無しでお願いします。
まずは血の問題に関して。1人目の殺人の際の首を切った理由ですね。
これは私も「血を隠すためではないか」と考えました。作中ではみんな鼻血の検査をしましたが、終わったとき『あれ?女性陣のアソコは確認しなくていいの?』と普通に思いました。
特に妊婦さんがいましたが、誰もそれを指摘しなかったことに違和感を覚えました。なので最初少しだけ妊婦さんを疑いましたね。
結果的にここは鮫嶋先生の性別のカモフラージュのためって感じですね。
ここでもし島田が『女性陣はお互いにトイレで確認してください』といい「妊婦さんと女性作家さんと鮫島さんがトイレに入っていきました」ってことになれば『おいおい鮫島、お前何してんだよww』って男性だと思っている読者が総出でツッコミ入れちゃうところですからね。
また、私は犯人は宮垣の秘書の「井野満男」だと思っていました。宮垣先生を殺したのも井野だと。 宮垣先生の死はまったく疑っていませんでした。
理由はやはり、いくら病院の先生がいるとはいえ、メイクぐらいで死んだフリは難しいのではないかと思ったからです。多少息づかいとかありますし。
そして全く当たってなかった推理として、秘書の「井野満男」が宮垣先生のゴーストライターで、鹿谷角実=井野満男という線です。
自分の書いた作品で地位を築いた先生が許せなくて殺し、自分の凄さに気づいてくれないその弟子たちも殺してやろうとする、といった内容を推理していました。「年齢の割にしっかりしている」という描写もありましたし…
まあ、結果はご存知の通り大きくハズレました。しかしこれがいいんですよね。自分の予想が裏切られる快感こそが推理小説に求めているものですから。
というわけで、非常に楽しく読ませていただきました。館シリーズ第4弾も楽しみですね。